2020.07.07 23:29021/恋人の残り香自分の布団とは、あまり仲がよくない。よく蹴飛ばして起きたら足元で小さくなっている。そのくせ抱き枕になっている親密な日もあれば、どっしりと僕に覆い被さって逃してくれない日もある。要するに僕の布団は気まぐれなのだ。と、布団のせいにする僕が気まぐれなのだろう。そんなに高くもなかったチェーン店の布団。それに僕は満足している。一緒に寝た恋人たちの残...
2020.07.06 23:34020/かわりゆく幼い頃ってどうしてあんなにいろんなものが平気なのだろう。ナメクジを飼ってみたり、バッタを釣ったり、ザリガニを捕まえたり。今ではできない芸当だ。ダンゴムシも、昔は大好きだった。つっつくとコロンとまるくなり、それを手のひらで転がして遊んでいた。体が広がると無数の細い足が天に向かってうじゃうじゃと動き出す。そうはさせまいとまたつっついて丸めて遊...
2020.07.03 00:18019/生きていること僕が初めて蛙を見たのは、車に轢き潰されたウシガエルだった。薄く伸びたゴム風船のようだと思った。口からはみでた赤黒いものが、かつてこれが生き物だったのだと表していた。生きているのかどうか。生きていたのかどうか。その判断はむずかしいと幼い僕は思った。その後、動物園で毒蛙たちをみた。カラフルで、毒々しくて、人工物みたい。きっと彼らも轢き潰された...
2020.07.01 00:06018/貧富自分の家が裕福であると気づいたのは、家そのもの、建物そのものが立派であることに気づいたからだった。住宅街には僕の家と大差ない大きな家が並んでいた。同じ区画の同じ家ばかり。けれどこの小さな世界ではスタンダードでも、一歩出たら違っていた。親が病で生活保護を受けている家庭の友人がいた。市営住宅だという彼女の家に遊びに行ったとき驚いた。壁が、コン...
2020.06.30 21:00『私と世界と言葉について』お題一覧ページ全50のお題が集まりました!ご協力くださった皆様本当にありがとうございました。それでは作品作り頑張っていきましょう……!楽しんでね!