その手で 23.モナと教室
今日は三年生が進路相談会。ということはモナがミズを独り占めできる日。イク先輩は悪い人ではないのかもしれない。でもミズのことを「ナイ」なんて酷いあだ名で呼ぶのは許せなかった。ミズにはミズって名前があるのに。モナというともだちがアルのに。
さっさと教室から出ようとするミズの腕をモナは逃さない。
「ミズ、一緒に帰ろ」
ミズはたまに時が止まったように静止する。何を考えているのか分からない。怖いけど、モナのこと嫌いになるわけないよね。
ミズは控えめに頷いた。眉下で切り揃えられた前髪が影になってどんな表情をしているのか分からない。でも、絶対ミズはモナのこと好きだ。だって――モナが好きなんだもん。
モナたちは腕を組んだまま廊下を歩いた。なんとも誇らしい。ともだち。ともだちだもん。そう、ともだち。
「ねえ、ミズ」
昇降口で靴を履き替えてからある決意をもって口にした。
「モナの家に来ない?」
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