013/赤いもみじに
「紅葉が隠してくれるから大丈夫だよ。こんなにも赤いんだもん」
山の斜面にある神社。僕は彼女とキスをした。
学校帰り。抑えきれない衝動。触れたくてたまらなかった。
どこなら人がいないだろうと神社に入った。そこには真っ赤に燃える楓の大木があった。
「こんなところではずかしい」
そうはいっても彼女は抵抗しなかった。唇を合わせ、舌先で触れ、唾液が滴り落ちた。
日が陰るころ、名残惜しむように抱きしめてから帰った。
彼女の体は秋風にしては熱かった。
においも覚えている。彼女の匂いだ。
秋になるとそんな性の記憶が蘇る。
赤いもみじのように赤い僕達。
その後、僕はこんな句を詠んだ。
この恋がどれだけ燃え上がろうとも楓の梢よ色づくなかれ
彼女とは程なくして別れた。
秋は、きっとそんな季節。
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